GUIDI完全解説
【GUIDI完全解説 第二章】
ホースレザーを知る。
種類・特徴・経年変化
Editor : Ohtsu Kazushige
GUIDIの靴を選ぶとき、多くの人が最初に目を向けるのはモデルである。
バックジップの「788」、フロントジップの「PL1」、短靴の「992」。どの形を選ぶかは、もちろん重要だ。
しかし、同じモデルであっても、使われる革が変われば、その一足が持つ佇まいも、履き込んだ先に現れる表情もまったく異なる。
滑らかな表面に艶を蓄えていくホースフルグレイン。起毛した繊維が潰れ、皺の稜線に鈍い光を宿すホースリバース。ケアの方法によって、乾いた無骨さにも、油分を含んだ重厚な艶にも変化するホースオールド。
GUIDIにおける革の違いは、単なる質感の違いではない。
それは、購入した一足がこれからどのように育ち、どのような完成へ向かうのかを選ぶことである。
「GUIDI完全解説」第二章では、ブランドを代表する3種類のホースレザーを中心に、オブジェクトダイによる染色、そしてシーズンごとに現れる特殊加工までを、Amanojak.の視点から解き明かす。
目次
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なぜGUIDIは、ホースレザーを使うのか
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ホースフルグレイン|磨くほど、艶が深くなる革
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ホースリバース|皺に鈍い光を宿す革
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ホースオールド|ケアによって完成が分かれる革
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3種類のホースレザー、どれを選ぶべきか
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オブジェクトダイ|完成した一足を、丸ごと染める
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ブラックだけではない、GUIDIの色
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特殊加工|革を実験の場へ変える
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特殊加工は、選ぶものではなく出会うもの
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革を選ぶことは、未来の表情を選ぶこと
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GUIDI完全解説
なぜGUIDIは、ホースレザーを使うのか
ホースレザーは、GUIDIを語るうえで外すことのできない素材である。
牛革と比べて繊維の密度が高く、部位による厚みや表情の差も大きい。最初は緊張感を持っていた革が、足の動きと体温を受けながら徐々に馴染み、皺と艶を深めていく。
この変化の大きさが、GUIDIの靴と極めて相性がいい。
GUIDIは、傷や血筋、皺、色の濃淡を覆い隠し、均一な素材へ整えることを目的としていない。生きていた革に残る痕跡を消さず、その個体差を一足の輪郭として成立させる。
それを可能にしているのが、1896年から革と向き合い続けてきたタンナーとしての技術である。
トスカーナの伝統に根差したベジタブルタンニン鞣しによって、革に必要な強度を与えながら、履く人の足へ馴染む柔軟性を残す。さらにオブジェクトダイとタンブリングを施すことで、革は深い色を受け取りながら収縮し、端正な工業製品には存在しない皺、歪み、色の揺らぎを生み出す。
強さと柔らかさ。本来であれば相反する性質を、一枚の革の中に共存させる。
GUIDIが「タンニングのマエストロ(巨匠)」と称される理由は、革を均一に制御する技術だけにあるのではない。革が持つ個体差を見極め、その可能性を損なうことなく、履く人の時間まで受け入れられる状態へ導くことにある。
履き始めには張りを感じる一足も、足の動きに合わせて少しずつ柔らかくなり、やがて足首や甲を包み込むように馴染んでいく。単に革が伸びるのではない。履く人の足の形、歩き方、可動域を記憶し、その人だけの輪郭へ変化していく。
そこからGUIDIの靴は、しばしば「革の靴下」と称される。
構築的で力強い外見とは対照的に、履き込んだ内側には、まるで靴下のように足へ吸い付くフィット感が生まれる。この外見と履き心地の矛盾こそ、GUIDIがほかのレザーシューズと決定的に異なる部分である。
新品の時点で見えている表情は、完成形ではない。履き始めれば、革は異なる顔つきと、その人だけのフィッティングへ大きく変わっていく。
GUIDIがホースレザーに求めているのは、最初から完成された均一な美しさではない。
時間の経過をデザインへ昇華し、履く人の足そのものを完成形にする余白である。
ホースフルグレイン|磨くほど、艶が深くなる革
GUIDIのホースフルグレインは、革本来の銀面を活かした、最も端正な表情を持つホースレザーである。フルグレインとは、表面を過度に削って傷や個体差を均一化するのではなく、原皮が持つ銀面を残した革を指す。だからこそ、使用する原皮の状態がそのまま完成度へ伝わり表情が現れる。
新品では、滑らかで密度のある表面と、抑制された光沢が印象に残る。ホースリバースやホースオールドと比べると輪郭が整って見え、GUIDIの無骨さの中に静かな品格を与える革である。
しかし、フルグレインの魅力は新品時の美しさだけではない。
ブラッシングを重ね、必要に応じて少量のクリームで油分を補い、柔らかな布で磨く。そうして表面の繊維が整えられるたび、曇っていた銀面の奥から艶が浮かび上がる。
つくられた光沢ではない。履く回数と手をかけた時間が、革の密度を可視化した艶である。
甲には鋭く深い皺が刻まれ、その周囲は次第に光を強く反射する。一方で、屈曲の少ない部分には滑らかな面が残る。整った面と履き皺のコントラストが、時間とともに一足の立体感を深めていく。
端正なトラウザーズやクワイエットラグジュアリーの装いへ馴染ませたい人。GUIDIの力強さは欲しいが、粗野には見せたくない人。そして、磨くという行為そのものを楽しみたい人に選んでほしい。
ホースフルグレインは、手をかけた時間が艶として返ってくる革である。

ホースリバース|皺に鈍い光を宿す革
ホースリバースは、革の裏側にあたる床面を表として使用したレザーである。フルグレインの滑らかな銀面とは異なり、表面には細かな繊維の毛羽立ちがある。新品の状態では光を吸収するようなマットな質感を持ち、色の濃淡や繊維の流れが一足ごとに異なる。
GUIDIらしい陰影と、素材そのものの荒々しさを最も直感的に感じられる革のひとつである。
履き込むと、足が曲がる部分やパンツと擦れる部分の毛羽が徐々に寝ていく。繊維が押し固められた箇所は色を深め、皺の部分やつま先には鈍い光沢が現れる。
全面が均一に艶を帯びるわけではない。
マットな部分と、摩擦によって光る部分。乾いた繊維と、深く潰れた皺。その不均一なコントラストが、ホースリバースにしかない奥行きを生む。
この革は、磨き上げて均一な美しさへ近づけるものではない。履く人の動きによって、光の生まれる場所が決まっていく革である。
Rick OwensやZIGGY CHENの重いドレープには、リバースの陰影が自然に接続する。ACRONYMの均質なテクニカル素材に合わせれば、その対極にある有機的な質感が装いへ深さを加える。履き込んだデニムと合わせたときには、ワークウェアに通じる乾いた無骨さが際立つ。
最初から完成された艶ではなく、自分の動きによって生まれる光を楽しみたい人に選んでほしい。
ホースリバースの光沢は、加工によって与えられたものではない。履いた事実が革の表面に残した痕跡である。

ホースオールド|ケアによって完成が分かれる革
ホースオールドの魅力は、変化の方向がひとつに決められていないことにある。新品の状態から、使い込まれた革のような乾いた陰影と、不均一な色の奥行きを持つ。表面を均質に整えすぎていないため、皺、擦れ、油分の入り方が強く現れ、履く人のケアによってまったく異なる表情へ育っていく。
ブラッシングを中心に乾いた質感を保てば、白けた部分や擦れが残り、土っぽく無骨な表情が深まる。
反対に、クリームやワックスを少量ずつ重ねれば、革の色は沈み、皺の周囲に重い艶が生まれる。つま先だけを磨くのか、全体へ油分を入れるのかによっても印象は変わる。
つまり、ホースオールドに正解のエイジングは存在しない。
購入時の状態を保つことよりも、どう付き合ったかがそのまま革に現れる。ケアを抑えた一足と、磨き込んだ一足は、同じモデル、同じ色であっても、数年後には別の革のような表情を見せる。
自分で完成を決めたい人。一般的な革靴のように、決められた正解へ整えることに興味がない人。傷や擦れまで含めて、自分だけの一足として受け入れられる人に選んでほしい。
ホースオールドは、履く人の美意識が最も露骨に現れる革である。

3種類のホースレザー、どれを選ぶべきか
3種類に、絶対的な優劣はない。違うのは、これからどのような表情へ向かうかである。艶を育て、端正さと力強さを両立したいなら、ホースフルグレイン。
マットな陰影と、皺に生まれる鈍い光を楽しみたいなら、ホースリバース。
ケアによって自分だけの表情をつくり込みたいなら、ホースオールド。
初めてGUIDIを選ぶなら、完成された見た目だけで判断する必要はない。
新品の革を見るのではなく、その革を履いた数年後の自分を想像する。どのような服に合わせ、どの程度手をかけ、どのような傷や艶を残したいのか。
現在の好みではなく、未来の一足を想像して選ぶことがGUIDIの革選びである。

オブジェクトダイ|完成した一足を、丸ごと染める
GUIDIの色と表情を決定づけているのが、ブランドを象徴するオブジェクトダイである。一般的な革靴は、先に染色された革を裁断し、アッパー、ライニング、ソールといった部材を組み上げて完成させる。
GUIDIは、その順序を反転させる。
まず靴を仕立てる。その完成した一足を、部材の集合ではなく、ひとつのオブジェクトとして染色する。
革、糸、コバ、ファスナーテープは、同じ染料の中へ沈みながら、それぞれ異なる染まり方をする。染色と乾燥によって革は収縮し、皺や歪みが生まれる。金属パーツにも自然な酸化が起こり、一足ごとに異なる色の揺らぎが残る。
量産品の基準では、これらは個体差として取り除かれるものかもしれない。
だが、GUIDIは取り除かない。
色ムラ、血筋、染料の入り方、収縮による輪郭の違い。それらを不良ではなく、同じものが二つと存在しない証明として完成させる。
オブジェクトダイは、単に深い色をつくる染色技法ではない。革靴を均一な工業製品から、一点ごとに異なるオブジェクトへ変える工程である。

ブラックだけではない、GUIDIの色
GUIDIと聞いて、多くの人が最初に思い浮かべる色はブラックだろう。確かに、深く沈んだブラックはブランドを象徴する色である。しかし、GUIDIの魅力をブラックだけで理解することはできない。
ホワイト、グレー、ブラウン、ボルドー、ブルー、グリーン、イエロー。コレクションやモデルによって、GUIDIは幅広いカラーバリエーションを展開してきた。定番色に加えて、そのシーズンだけの色や、ショップ・ブランドとの協業によるカスタムカラーも存在する。
オブジェクトダイによる色は、平面的ではない。
同じ色名であっても、フルグレインでは銀面の奥に色が沈み、リバースでは毛羽立ちが光を分散させる。革の厚み、染料の入り方、乾燥時の収縮によって、一足の中にも濃淡が生まれる。
そして、その色は完成後も止まらない。
履くことで擦れ、光に触れ、ケアによって油分を受け取る。色は少しずつ深まり、ときには下地を覗かせながら、購入時とは異なる色へ変化していく。
GUIDIにおける色は、選んだ瞬間に固定されるものではない。時間とともに更新され続ける色である。

特殊加工|革を実験の場へ変える
GUIDIのホースレザーには、フルグレイン、リバース、オールドといった定番的な革だけでなく、シーズンごとに実験的な特殊加工が現れる。ここで紹介するのは、その一例にすぎない。
レジナート(樹脂)エフェクト
ホースリバースの毛羽立った面に樹脂加工を施し、繊維を抑え込むことで、奥行きのある鈍い光沢を生み出したレザー。
履き込むほど、甲やつま先など摩擦を受ける部分の樹脂が徐々に薄れ、その下からリバースレザー本来の起毛感が現れる。
光沢を保つための加工ではない。鈍い艶が崩れ、天然皮革の荒々しさが露出していく過程そのものを楽しむ加工である。
樹脂が残る部分、曇った部分、起毛した部分。その不均一なコントラストが、時間とともに一足だけのヴィンテージのような表情をつくり出す。
コールトリートメント
石炭や炭、鉱物を思わせる特殊な染料や成分によって、革の表面にスモーキーな色合いと乾いた質感を与えるトリートメント加工。
通常のブラックレザーのような均一な色や光沢ではなく、炭を擦り込んだようなマットな表情と、不規則に揺れる黒の濃淡を持つ。
新品では光を吸収するような乾いた質感が際立つが、履き込むほどに摩擦を受ける部分が馴染み、革に含まれた油分が表面へ現れる。やがて甲の皺やつま先には鈍い艶が生まれ、マットな部分とのコントラストが深まっていく。
均一な黒を保つための加工ではない。
乾いた黒が、履く人の体温と動きによって艶を帯びていく。その変化までを含めて完成させるのが、GUIDIのコールトリートメントである。
メタリックエフェクト
シルバー、ゴールド、ブロンズなど、金属を思わせる光を革へ重ねる加工。
新品では強い存在感を放つが、GUIDIのメタリックは装飾的な輝きだけを目的としていない。屈曲や摩擦によって表面が割れ、曇り、下地が現れることで、古い金属が酸化したような陰影へ変化していく。
革の柔らかさと、金属のような硬質な光。その矛盾が、一足の中で共存する。
特殊加工の変化は、加工方法、革の種類、使用環境によって異なる。表面の摩耗や剥離、色移りまで含めて素材の特性であり、均一な状態を保つための革ではない。
完成された表面を守り続けるのではなく、様変わりしていくことで完成へ近づく。それがGUIDIの特殊加工である。
特殊加工は、選ぶものではなく出会うもの
特殊加工の多くは、ブランドの定番として毎シーズン同じ状態で供給されるものではない。その時期にGUIDIが向き合っていた色、物質、表面、経年変化への実験から生まれるシーズナルピースである。同じ名称に見える加工であっても、次のシーズンに同じ革、同じ色、同じモデルで再びつくられる保証はない。
だから、特殊加工のGUIDIを定番モデルと同じ基準だけで考えるべきではない。
いつでも買える完成品ではなく、そのシーズンにしか存在しない研究の断片。GUIDIというタンナーが、百年以上蓄積してきた革の知識を使い、まだ見たことのない表面を生み出した記録である。
定番には、時間をかけて選べる安心がある。
特殊加工には、その瞬間を逃せば二度と出会えない緊張がある。
理屈よりも先に惹かれたなら、その感覚を信じていい。次の入荷を待っても、同じものが届くとは限らないから。
特殊加工のGUIDIは、探して選ぶものではない。
出会ったときにしか選べない一足である。

革を選ぶことは、未来の表情を選ぶこと
GUIDIのホースレザーは、同じモデルに別の質感を与えるためだけに存在しているのではない。磨くほど艶を深めるフルグレイン。履く人の動きによって鈍い光を宿すリバース。ケアの方法がそのまま個性になるオールド。そして、表面が崩れ、下地が現れることで完成へ向かう特殊加工。
それぞれの革には、それぞれ異なる時間が流れている。
どの革が最も優れているかではない。
どの変化を、自分の時間として引き受けたいかである。
GUIDIの革は、買った瞬間の美しさだけで選ぶものではない。履き皺、艶、擦れ、色の変化までを想像し、その先にある一足を選ぶ。
革を選ぶことは、まだ存在していない未来の表情を選ぶことである。
そしてGUIDIは、その未来を履く人に委ねる。

Amanojak.には、GUIDIを長く愛用し、数多くの革とその変化を見続けてきたスタッフがいる。
革の違い、経年変化、サイズ選び、手持ちの服との相性まで、気になることがあれば店頭はもちろん、オンラインのチャットからも気軽に相談してほしい。
その人にとって最良のGUIDIを選ぶために、僕らの知識と経験を惜しみなく届けさせていただきます。
GUIDI完全解説
第二章 ホースレザーの種類と特徴
第三章 モデル別サイズ/フィットガイド(近日公開)
第四章 GUIDIスタイルサンプル(近日公開)
次章では、GUIDIの主要モデルごとのサイズ感、足型による選び方、履き始めのフィッティングから馴染んだ後の変化までを詳しく解説。お悩みの皆様のご参考になりますと幸いです。
